◆お正月飾り 赤い実
秋が深まるにつれ、日本の自然は特別な変化を遂げます。
その中でも、赤い実をつける木々は、季節の移り変わりを最も色鮮やかに伝える使者です。
この鮮やかな赤い実たちは、ただ美しいだけでなく、多くの生物にとって重要な食料源となり、
また私たち人間にも多くの物語や伝統を語りかけます。
ここでは、なぜこれほど多くの木が赤い実をつけるのか、その生物学的な理由や文化的な意味に迫ります。
古くから日本の風景を彩り、祭りや伝統に深く関わる赤い実たちの魅力を、紐解いていきましょう。
赤い実が多いのはなぜ?
木になる実は、赤い色が多いと思いませんか?
たとえばサクランボ、リンゴ、ザクロなどがあげられます。
特に秋から冬にかけては赤い色の実の果実が多く、視覚的にも目立ちます。
果実が赤い色をしている理由は、主に生物学的な適応と進化の結果です。
赤い色を持つ主要な要因は「アントシアニン」という色素によるものです。
アントシアニンは植物が生産する一種のフラボノイドで、多くの健康上の利点があるとされています。
赤い果実にアントシアニンが豊富に含まれている理由
◆アントシアニンが多いイチゴ
赤い果実にアントシアニンが豊富に含まれている理由には以下のようなものがあります。
1. 鳥や動物への誘引
赤い色の果実は、鳥や他の動物によく目立ちます。
これらの動物が果実を食べ、種を広範囲に散布することで、植物は種の拡散を促進できます。
2. 紫外線からの保護
アントシアニンは紫外線から植物を保護する役割を持っています。
紫外線はDNAに損傷を与えることがあるため、これを防ぐことは植物にとって重要です。
3. 抗酸化作用
アントシアニンには強力な抗酸化作用があり、植物細胞を環境ストレスから守ります。
これにより、植物はより健康に成長し、病気や害虫から身を守ることができます。
4. 環境適応
特定の気候や環境条件において、赤い色の果実がよりうまく生き残ることがあります。
このような環境では、赤い果実を持つ植物が進化的に有利になることがあります。
これらの理由により、多くの植物では赤い果実が進化し、広がってきました。
それぞれの植物種において、色の発現はその種の生態系内での役割や、生存戦略に密接に関連しています。
冬の赤い実のなる木・代表は
◆ヒイラギ
「冬の赤い実」といわれる季節は、12月から1月頃まで。
冬に赤い実をつける木の代表として、5種類をみてみましょう。
これらは食用でないものも含まれていますが、見た目の美しさや生態系における役割で重要な存在です。
1. ナンテン(南天)
日本の伝統的な庭園によく見られる植物で、冬に赤い実をつけます。
ナンテンは縁起が良いとされており、新年の装飾にも使われます。
2. サンザシ(山査子)
サンザシは小さな赤い実をつける木で、その実は鳥たちにとって冬の重要な食料源です。
サンザシの実は人間にも食べられますが、酸味が強いです。
3. ヒイラギ(柊)
ヒイラギは、光沢のある緑の葉と鮮やかな赤い実が特徴的な常緑樹です。
クリスマスの装飾に使われることもあります。
4. シロダモ(白檀)
シロダモは、秋から冬にかけて赤い実をつける木です。
実は小さく、鳥類にとっての食料源となります。
5. マユミ(真弓)
マユミは、冬に成熟する鮮やかな赤い実が特徴的です。
実は食用ではありませんが、野鳥などの動物にとって貴重な食料となります。
これらの木々は、冬の風景に色と活気を添え、野生動物にとって重要な食料源となっています。
また、文化的な意味合いを持つものもあり、日本の自然や文化に深く根ざしています。
秋の赤い実のなる木・代表は
◆ピラカンサ
「秋の赤い実」といわれる季節は、9〜11月頃まで。
秋に赤い実をつける木の代表として、4種類をみてみましょう。
これらは食用でないものも含まれており、その美しい実は秋の風景を彩ります。
1. カエデ(楓)
多くのカエデの種類は、秋に鮮やかな赤い色の葉をつけることで知られていますが、中には赤い実をつける種類もあります。
これらの実は、翼状の形をしていて、風に乗って広範囲に種を散布します。
2. ヤマボウシ(山法師)
ヤマボウシは、初夏に白い花を咲かせ、秋には赤い実をつけます。
これらの実は小さくて丸く、鳥たちにとって魅力的な食料源となります。
3. ピラカンサ(山査子類)
ピラカンサは、密集した小さな赤い実を秋につけることで知られています。
これらの実は、鳥類にとっての重要な食料源であり、庭園の装飾にも人気があります。
4. ツルウメモドキ(蔓梅擬)
ツルウメモドキは、秋に鮮やかな赤い実をつけるつる植物です。
この実は、鳥たちに食べられやすく、庭園での観賞用としても人気があります。
これらの木々は、秋の風景に特有の魅力を加え、野生動物にとっても重要な食料源となっています。
また、庭園や公園などでの観賞用としても楽しまれています。
お正月に使われる赤い実の見分け方
お正月の飾りに使われる赤い実の木として、南天と千両と万両があります。
その鮮やかな赤い実が新年を象徴する縁起物として、日本の伝統的なお正月の装飾に用いられますが、
その違いはどこにあるでしょう。
南天・千両・万両の違い
1. ナンテン(南天)
◆ナンテン
ナンテンはお正月の飾りに最も一般的に使われる植物の一つです。
赤い実は「難を転ずる」(困難を逆転させる)という言葉遊びにちなんで縁起が良いとされ、厄除けや福を呼ぶ象徴として広く親しまれています。
- 色: ナンテンの実は鮮やかな赤色です。
- 大きさ: 比較的小さめで、直径が数ミリメートル程度です。
- 配置: 実は枝の脇に密集してつきます。
- 葉: 濃い緑色の葉が特徴で、葉はやや光沢があり、尖った形状をしています。
- 花: 白く小さな花を夏に咲かせます。
実は房のような形をつくり、たれさがるように実ります。
2.センリョウ(千両)
◆センリョウ
千両は、緑の葉に対して鮮やかな赤い実が際立つ植物です。
実は秋から冬にかけて形成され、お正月には美しい赤い色を見せます。
- 色: センリョウの実も鮮やかな赤色です。
- 大きさ: ナンテンよりも大きく、直径が1センチメートル近くになることもあります。
- 配置: 実は葉の上近くにまとまってつきます。
- 葉: 葉はナンテンよりも大きく、濃い緑色で、光沢がありますが、ナンテンの葉ほど尖っていません。
- 花: 春に小さな白い花を咲かせます。
3.マンリョウ(万両)
◆マンリョウ
マンリョウは小さな赤い実と緑の葉が特徴の植物で、名前の「万両」が金運や豊かさを連想させるため、縁起物として人気があります。
- 色:マンリョウの実は鮮やかな赤色が特徴です。この色はお正月の飾りとして非常に好まれます。
- 大きさ:実は比較的小さく、直径は一般に数ミリメートルから1センチメートル程度です。
- 形状:実は丸い形をしており、表面はなめらかです。
- 配置:実は枝に沿って密集してつきます。この密集した配置は、見た目の豪華さを増すため、装飾として特に魅力的です。
- 葉:マンリョウの葉は緑色で光沢があり、実とのコントラストが美しいです。
- 花:マンリョウは春に小さな白い花を咲かせますが、花よりも赤い実が特に有名です。
マンリョウの実は、その名前から「大金」や「豊かさ」を連想させるため、縁起物として人気があります。
冬に赤い実がなる木/お正月に使われる南天千両万両の違い/見分け方・まとめ
冬の訪れと共に、赤い実をつける南天、千両、万両の木々が、日本の風景を彩ります。
南天は「難を転じる」という言葉通り、厄除けと縁起の良さを象徴しています。
一方、千両と万両はその名の通り、豊かさと繁栄を表し、お正月の飾りには欠かせない存在です。
それぞれの木が持つ特徴的な赤い実は、冬の自然の美しさを際立たせるだけでなく、日本の文化や伝統に深く根差した意味を持ちます。
新年を迎える準備をするにあたり、それぞれの違いや特色を知って、日本の風習をいつくしんでいきたいものですね。
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